はじめに
昨今の日本は、人口減少、自然災害等多くの諸問題を抱えています。天草地域においても同様で、人口減少に関しては特に深刻な問題となっており、今後加速度的に進行することが予想されています。更にそれに伴い経済の衰退、地域コミュニティの機能低下、働き手の不足、更なる少子高齢化の進行など、益々深刻な状況になることが予想されます。このような諸問題が多くある一方で、天草には自然、文化など独自のポテンシャルが健在であり、その魅力というのは変わらず普遍的に存在しています。また、人と人とのつながりも天草の魅力の一つとしてあります。このような現状に対して、私たち青年会議所は今後どのような明るい未来像を描き、理想を掲げ、その未来に向かってどう行動していくべきなのでしょうか。
今の時代、価値観の多様化というものが叫ばれています。その中で私たち青年会議所は明るい豊かな社会の実現を理想とし、「修練」「奉仕」「友情」の三信条のもとに共通の価値観を持って運動をしています。これは一人ひとりが常に意識しながら行動していくことが求められます。そして共にその価値観に基づき、しっかりとコミュニケーションを取りながらその想いを共有し、様々な体験をすることで組織としての一体感が生まれます。それにより組織の一員としての意識やメンバーが活動する上での各々の意義も芽生え、強固な結びつきになると考えます。これから私たちが地域の発展のために運動を行うには、まずは組織の発展が重要です。そのためには、前提としてメンバー一人ひとりが組織に属する意義を見出し、価値観を共有し、理念浸透をした上で、メンバー間の結びつきを更に深くする必要があります。その中で個性溢れる人財がいるからこそ、個々の多様な考え方、知識、想いなどその一つひとつがつながり、大きな強みとなってより良い運動を起こすことができると考えます。共創し、共体験をすることで同じビジョンを掲げ、理念や価値観を深く共有し、まずは近しい人から少しずつ共感の和を広げる。そして私たちと関わる多くの人たちとともに天草をより良くし、ともに同じビジョンに向かって歩むことで地域をより豊かな社会にできる、そのような事業を展開していきます。
共に創る豊かな天草を目指して
豊か、とはどういう意味なのでしょうか。広義では、満ち足りた状態であること、十分なさま、のびのびとしたさま、等の意味がありますが、捉え方は恐らく人それぞれだと思います。では、天草という地域の中で豊かさとは何かと問われるとどういうことを思い浮かべるでしょうか。自然、素晴らしい食、歴史情緒溢れる文化、他の地域に比べても遜色ない、あるいはそれ以上の魅力ある資源が溢れています。「豊かさ」を満ち足りた状態、十分なさまであるという意味で捉えるのであれば、資源の話で言えばこれ以上ない豊かさがあります。では、そのような天草の誇れる豊かな資源を私たち自身の天草島民としての誇りや愛着に、結び付けるにはどうすればよいのでしょうか。それは、一部の島民だけではなく、一人ひとりが天草という地域の豊かさ、素晴らしさを認識することが重要だと考えます。それが天草島民としての誇りや愛着につながり、天草を創る当事者としての意識も芽生え、お互いに関わり合いながら明るい未来像を共創していくことで心の豊かさをも育まれます。経済的な豊かさも大事ですが、心の豊かさも同じように重要です。住み暮らす多くの人たちが、天草に対する認識をより良く変革し、一体となって天草の未来を創ることが、多くの諸問題を抱える現状を少しでも良い方向へ進めることができる持続的な運動になると感じます。本年は、天草本渡青年会議所が2024年度に策定した中長期ビジョンの始まりの年となります。島民の皆様、そしてメンバーと共に天草の展望を描けるようなまちづくり運動を展開していきます。
子どもたちのために
体験するということは、豊かな人間性を育むうえでとても大切なことです。しかし、ただ体験するだけというのは身体的な刺激や経験にはなりますが、将来心に残る持続的な成長のための経験にはなり得ないと感じます。体験する中で、大人によって決められた、与えられたことをただやるのではなく、なぜ、どうしてこの体験をするのかが重要です。この体験によって何を学んでいただき、どういう大人に成長して欲しいかということを明確にしながら事業を行う必要があります。それは、事業に参加する子供たちだけではありません。事業に関わるメンバー、関係者の皆様全員が計画から実施までしっかりと目的意識を共有し、共に創ることですることで目的に沿った行動や判断を行うことができ、更に良い事業を生み出します。子供たちは事業を終えて何を思うでしょうか。きつかった、楽しかった等のありふれた言葉ではなく、事業本来の明確な目的を達成し、子供たちの心が動く事業であったか、成長できたという実感を持ってもらえたかが重要です。子供たちが体験したこと、経験したことを自分事としてご家族に自然と語り、その語りによって周りにも良い影響を与えていく。参加した子供たち自身が発信することで事業への理解が更に深まり、長期的な記憶として定着すると思います。今後の社会情勢はもはや誰も想像できないほど不透明です。そのような社会でも、これから大人になっていくために必要な体験を通して、子供たちの健全な育成ができる事業を展開していきます。
価値観の共有と共創へ
私たちが理想とする社会を実現するためには、そこに住み暮らす人たち、より良い地域づくりをされている様々な団体との交流は不可欠です。天草を良くしたい、その一心で私たち含め様々な人たちが活動をされていますが、その想いを深く共有しながら交流することが重要です。それは、入り口の角度は違えどより同じ方向、同じ目標を向いて共有しながら活動を行うことで、より強固な結びつきになると信じているからです。本年度も私たちの運動に関わる様々な諸団体との交流を深めてまいります。
私たちは交流事業の一環として、郷土芸能であるハイヤ踊りを長年継承してまいりました。その継承のやり方は私たち自身が踊りや地方を表現するだけでなく、現在は地域の子供たちへの指導という形で次世代にも引き継いできました。天草南風凛風會など長年共に継承、活動をしてきた団体もあります。この運動は絶やさずに、引き続き行っていく必要があります。そして、この郷土芸能を、青年会議所として同じビジョンを掲げるメンバー、そして私たちの活動や理念に対して理解をして下さっている天草南風凛風會の皆様と共に創るからこそ強い一体感が生まれます。私たちの日頃の活動に共感し、老若男女問わず共に運動していただける仲間も巻き込み共創することで、それは他団体にはない大きな強みになり、私たち独自に表現できる活力ある天草を示すこともできます。本年も、多くの伝統芸能の継承を行う様々な団体がある中で、私たちの強みを生かしながら事業を展開していきます。それが、私たち自身が青年会議所として存在する意義を見出し、天草島民の皆様へ向けての存在価値を示す絶好の機会になると信じています。
共創する同志を求めて
会員拡大は大きな課題です。私たちの運動を行っていくには多くの仲間が必要です。しかしながら、現実は会員減少の一途をたどっています。私たちはなぜ青年会議所に入会したのか振り返ってみると、仕事のため、人脈作りのため、地域の発展のため、知人や先輩に勧められて、など様々な入会動機があると思いますが、入会の動機として一番理想とする形は想いを「共感」してもらうことだと感じます。その共感を得るためには私たち自身が組織に魅力を感じ、メンバー1人ひとりがJCに対しての意義を見出し、JCを語り、愛着と誇りを持つことだと思います。私たちは何のためにこの運動を行っているのかをしっかり理解し、多くの人々に共感を得るための基礎を創る。そこからその熱量を地域に眠る人財へ、その想いを広く伝播させ、仲間づくり、会員の拡大につなげていければと考えます。
結びに
私たちは明るい豊かな社会の実現を目指し、これまで地域をより良くする運動を行って参りました。これは運動、事業を行う上で大事な理念であり根幹の部分です。メンバーと共にこの理念を深く共有し、ひいてはメンバーのご家族、会社、そして地域全体にも伝播させ、共に創っていく必要があると考えます。それは、私たちの運動や活動で地域をより良くするためには、私たちの運動に関わる多くの人たちの協力が必要だからです。私たちがJC運動を行えているのは、メンバーのご家族、会社などの理解があってこそでもあります。仕事や会社のため、家族のため、自己成長のため、人脈作りのためなど、所属するメンバーによってJC活動をする意義は様々だと思いますが、その意義がより具体的で、熱意があるほど周りを巻き込むことができます。そのような想いをまずはメンバーから身近な人へ、そして社会全体まで広げていき、共感を得ていく。私たちは何のために、誰のために、なぜこの活動を行っているのかを理解していただく。その中でコミュニケーションと対話によって、多様化した社会の中でも互いに敬意を抱き、互いに尊重しながら、共に創り、共に体験する。昨日より今日、今日より明日、より良い豊かな天草を、個性溢れる多様な価値観を持ったメンバーで、創造性に富んだアイデアと発想で、私たちと関わる多くの皆様と共に豊かな天草を創っていきます。